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BIMとフロントローディングの関わり

フロントローディングとは、建築業界で長年実施されてきた施工スケジュールや施工段取りとは違い、新たな考え方と方法を取り入れた作業設計方法です。フロントローディングの考え方やメリット・デメリット、BIMの普及に伴った導入メリットに注目しながら、詳しくまとめています。

フロントローディングとは

フロントローディングとは、設計に時間をかけて作業を前倒しして建築完成までスケジューリングする手段のことです。これまでの建築現場では、施工を進めながら設計を見直し、完成に近づくたびに建築クオリティを高めるスタイルで進めていました。一方フロントローディングは、設計段階で発生するであろう事象に対し、検証・シミュレーションを細かく実施。設計当初の計画のまま完成に近づけ、変更をできる限り抑えるスタイルなのです。作りながら完成に近づける従来のスタイルとは違い、当初の完成予想図から変更を極力減らしながら、理想通りに建築できます。

フロントローディングのメリット

フロントローディングを採用して建築した場合、以下のようなメリットが挙げられます。

効率的な建築を実現

フロントローディングを取り入れる場合、設計段階で発生しうる変更や事象が明確にできるため、建築設計から完成までスムーズかつ効率的に作業できます。変更に生じる工数を減らし、新たな行程追加や作業スケジュールの変更を抑えられるのも魅力的。設計段階で見直しやシミュレーションを重ねるため、施工済み部分のやり直しや大幅な変更を防げます。現場の士気低下防止にも効果的でしょう。

コストを抑えて建築できる

フロントローディングは、大幅な設計変更を減らせるのが特徴です。そのため、施工途中の初期設計見直しも防ぎ、追加発注によるコストアップリスクを軽減できます。見積もりから大幅に予算がずれる心配もありません。顧客満足度向上にも、期待できるでしょう。コストを抑えながらクオリティの高い建築設計ができる点も、フロントローディングのメリットです。

試作品制作回数を軽減できる

フロントローディングは、設計初期段階で多くの課題や懸念点を見出せます。事前に問題を発見しクリアにしたのち図面にするため、図面完成後の修正を抑えられる点もメリットと言えるでしょう。試作品制作回数も少なくできるため、スムーズな建築計画を立てやすいのです。

フロントローディングのデメリット

フロントローディングを採用して建築した場合、以下のようなデメリットが挙げられます。

設計者の負担が大きい

フロントローディングは、従来実施していた施工しながら修正していくスタイルを、設計時に全て済ませてしまうスタイルです。そのため、初期設計時点で様々な事象を想定しながら計画します。その分設計者の負担は多く、仕事量が増える点はデメリットでしょう。人員を増やしたり担当を分けたりなど、できる対策を事前に想定しながら進めるのがポイントです。

初期段階で多くの部門と連携をとらないと進まない

設計して完成ではなく、トラブルや課題に対して担当部署の知見を元に対策するのが、フロントローディングの特徴です。そのため、事前に部門ごとの担当者と一緒に進めなければなりません。いかに関係各所とうまく連携できるか?がポイントです。複数部署とほぼ同時進行で進めるため、スムーズに設計完成まで運びにくい点もデメリットと言えるでしょう。

フロントローディング導入時には企画段階で事前準備が必要

建築業界でフロントローディングを導入するときは、事前準備やトラブル対策を重視しながら進めましょう。

建築計画スタート時に細かく担当者を決め、どの項目に最終決定権があるのは誰か?も明確にしておきましょう。現場に入る業者をざっくり決めるだけでなく、どこの業者にいくらで依頼するのか?設計図に不備はないか?施工時に生じる問題点の事前指摘など、スムーズに進められるように段取りします。またプロジェクト全体の責任者や、項目ごとに決定権を持つ人を決めると◎!設計者の負担を減らすためにも、責任者を一人にしないがポイントです。フロントローディングスタイルを導入するときは、BIMシステムを導入も一緒に検討しましょう。

BIMとは

BIMは、ビルディングインフォメーションモデリングのことです。パソコン上に制作した建築物のデジタルモデルに、詳細な情報を想定したデータベースを作成できます。

など、建築における必要情報を効率的にまとめ、細かいデータを元に設計段階で細かいシミュレーションができるシステムです。

BIMを導入するメリット

実際に設計する時のコストカットできる

BIMを導入すると、設計スタート段階で想定されるコストを削減できるメリットがあります。初期段階で課題や改善点を洗い出せ、設計時に検討する項目も明確にできるのも魅力的。設計段階で高いクオリティを想定できるのもメリットでしょう。シミュレーションしやすく、手戻り回数も下げられます。

品質の見える化ができる

従来の建築設計スタイルでは、品質チェックや改良するときに模型を作成します。BIMでは、よりシミュレーションしやすいように3Dモデルを使ったバーチャルシステムが使える点がメリットです。設計の仕組みや起こりうる想定をイメージしやすく、模型では見えなかった課題を明確化できるため、フロントローディングをより効率的に取り入れられるでしょう。業務スピードや各部署との連携もしやすく、フロントローディングのデメリットをクリアにできる点もメリットとして挙げられます。

設計から完成までのフローをスムーズに進められる

BIMは設計だけでなく、建築に関わるすべての工程管理がスムーズにできるシステムです。設計から建築までに起こりうるタスクや決定事項の管理がしやすく、設計者だけでなく作業に関わる人たちが、状況把握しやすい点もメリットと言えるでしょう。専門的知識がなくても視覚的にわかりやすい3Dバーチャル映像を使用できるため、クライアントに解説しやすい点も魅力的。コミュニケーションはもちろん、業務連絡がスムーズにできるため、施工完了までスピーディーに進行できます。作業の段取りや意思決定管理だけでなく、コスト管理もしやすいのもBIMのメリットでしょう。

フロントローディングで効率的かつスピーディーな施工管理を実現しよう

フロントローディングは従来の建築施工管理とは違い、設計段階で想定されうる多くの課題をクリアにできます。施工時の大幅な変更や想定外なリスクを回避でき、スムーズに進行できる方法です。施工管理だけでなく、コスト・人材管理など、多方面にアプローチできるのも魅力的!コミュニケーションも取りやすく、設計から納品までのワークフローをスマート化できます。メリット・デメリットを踏まえた上で、自社の進め方にあったスタイルを取り入れてみましょう。フロントローディングをスムーズに導入するためにも、BIMを使って効率的に管理・運用できる方法を模索するのも◎!

BIMソフトの導入は急速に進んでいる

2020年度に建設関係者480人に行った調査(※1)にて56.4%が勤務先でBIMを導入していると回答されているように、BIMの導入は急速進んでいます。 BIM導入済みの286の設計事務所においては、65.9%が「効果があった」とし、プレゼン力の向上、ミスの減少、時間短縮などの実感も得られています(※2)。
代表的なBIMソフトやおすすめの連携ソフトもまとめていますので、検討してみてはいかがでしょうか。

※1…参照資料:2020年度BIM活用実態調査レポート(日経BPコンサルティング) (https://damassets.autodesk.net/content/dam/autodesk/www/apac/pdf/bim-report-final.pdf)
※2…参照資料:日本建築士事務所協会連合会 BIMと情報環境ワーキンググループ「建築士事務所のBIMとIT活用実態にかかわる調査 報告書(2019)」(https://www.njr.or.jp/pdf/BIM_report_web.pdf)

代表的なBIMソフトや
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