改修工事やリノベーションを行ううえで必須になるのが、既存建物の調査・測量。そこで活躍しているのが3Dレーザースキャナーです。3DスキャナーとBIMを連携させた活用も活発になってきています。ここでは一般的な3Dスキャナーのほか、注目のiPhone/iPadを使用したスキャンとBIMソフトの連携事例を紹介します。
「iPhone 12 Pro」と「iPhone 12 Pro Max」には、背面カメラ部に「LiDAR(ライダー)スキャナ」が搭載されています。
LiDARは、Light Detection and Ranging(光検出と測距)の略で、レーザー光を利用して離れた物体の距離を測るしくみ。
このLiDARスキャナで取得した点群データをBIMにも取り込むことができるのです。
取り込むために必要なのが、株式会社プロノハーツが開発したアプリ「pronoPointsScan」。このアプリは、iPhone 12 Pro/Pro MaxのLiDAR機能で3D点群を取得し、ファイルに出力することができます。
まずは、アップルストアでiPhone 12 Pro/Pro MaxにpronoPointsScanをダウンロード(無料※)してインストール。
pronoPointsScan は、LiDARを搭載したiPhone 12 Pro, iPhone 12 Pro Max, iPad Pro (第2世代) 11インチディスプレイまたはiPad Pro (第4世代) 12.9インチディスプレイ以降に対応しています。
※無料版は、スキャン回数の制限があります
※参照元:株式会社プロノハーツ公式サイト「Apple社LiDAR搭載iPad Proによる3D点群スキャンアプリのリリースについて」
「Apple社LiDAR搭載iPad Proによる3D点群スキャンアプリのリリースについて」
https://prono82.com/2020/09/28/apple社lidar搭載ipad-proによる3d点群スキャンアプリのリリース/
アプリを起動し、iPhone 12 Pro/Pro Maxをスキャンしたい対象にかざしてスキャンボタンを押すことで、実物の画像に重ねてスキャン結果の点群が表示されます。ボタンを1回押すごとに、そのときに見えている範囲の点群が取得されます。
取得された点群データは、iPhone 12 Pro/Pro Max内に保存できます。保存したスキャンデータはビューワーで表示することもできます。
Archicadがインポートできるのは、「.xyz」「E57」形式の点群データ。
pronoPointsScanからエクスポートできるのは、.txtですが、パソコンに取り込んで拡張子を「.xyz」に書き換えることで、Archicadにインポートできるようになります。
Archicadにインポートされたデータには、寸法も測定でき、3D画像で見ることもできます。モデリングの「あたり」として活用することもできます。
詳細はこちらで紹介されています。
※参照元:How to use Archicad(GRAPHISOFT JAPAN)「iPhone12Proを使った点群取得とArchicadへのインポート」
https://howtousearchicad.com/function/import-export/点群/8185/
2分間ほどスキャンした点群データをArchicadに取り込むまでは5分程度。精度としては、センチメートルの誤差はありますが、これまで大がかりで高価な装置を必要とした3Dスキャンを、日常使用する携帯端末ででき、手軽なうえに寸法も測ることができます。
※実際に現地調査などの場合、必要なデータを撮影するのは手間がかなりかかりますが、用途によっては活用の幅が広がるのではないでしょうか。
ここで紹介しているBIMソフト「Archicad」について公式サイトでもっと詳しく見る
リニューアル工事の計画上必要な施工前の状況把握ができない場合、現地調査でメジャー計測が必要になる。しかし、膨大な計測箇所があり、高所のための仮設足場も必要になり手間がかかるという課題がありました。
レーザーにより、全周囲の物体の寸法計測ができる3Dスキャナーというものがあることを知り導入しました。
三脚に設置した3Dスキャナーが自転して、5~10分程度で周囲を計測。3Dスキャナーから見えない部分は計測できないため、位置を変えて計測しなければならないため、ある程度のノウハウが必要になります。計測結果は、パソコン上で無数の点により3D物体を再現する点群データとして得られ、各計測位置の点群データを重ね合わせて一つのデータに統合することができます。
3Dスキャナーの導入により、メジャーによる膨大な計測作業が不要になりました。メジャーによる手計測では、キャットウォークから離れた部分の計測が困難ですが、3Dスキャナーのレーザー計測であれば離れた部分も計測できるのがメリット。
3Dスキャナーは見える部分しか計測できないため、機械室や屋上設備のリニューアル工事での活用が多くなります。メジャーによる手計測では、キャットウォークから離れた部分の計測が困難ですが、3Dスキャナーのレーザー計測であれば離れた部分も計測できるのがメリット。
3Dスキャナーで計測したデータをもとに、既設ダクトのBIMデータを作成。追加する鉄骨をIFC形式で読み込み、干渉チェックを実施。また、他設備も点群データで計測できるため、それも考慮して、撤去しなければならないダクトと新設ダクトルートを決定しました。
3Dスキャナーの導入で計測は効率化されましたが、点群データをBIMに変換する作業に課題がありました。点群データで寸法を計測していくのは慣れと労力が必要でした。
また、点群データを弊社で使用している設備CADソフトで読み込んでみたところ、高さ情報が欠落するなど、不完全な状態に。点群データはデータ量が大きく、取扱いも簡単ではありません。
3Dスキャナーに付属していた点群処理ソフトには自動抽出機能もありましたが、長い計算時間が必要でした。
BIM化方法を模索している中、出会ったのがエリジオン社の点群処理ソフトInfi Points。
平面と円柱を自動抽出するのに数分、さらに、エルボなどの管継手まで自動抽出できましたが、BIMソフトとの連携が不十分だったため、NYKシステムズ社に協力していただき、設備CADソフトRebroとの連携を検討しました。
その結果、DWG形式でInfi Pointsの3次元形状データをRebro上で再現できることがわかりました。
BIMを作成するには、現状は3次元形状データをトレースする必要がありますが、Infi PointsとRebroをつなぐ専用ファイルの導入が予定されています。
※参照元:この記事は、けんせつPlaza「建設ITガイド」2016年7月の記事を参照しています。
(http://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/8698)
ここで紹介しているBIMソフト「Rebro」について公式サイトでもっと詳しく見る
点群からBIMソフトへ変換するソフトの登場により、膨大な点群データをBIM要素に変換させることは容易になっています。
多くの3Dスキャナーからのインポートが可能なPointCabは、2D/3Dのいずれの機能を問わず、点群データから平面図または3Dモデル、BIMソフトへスピーディに変換させることが可能です。
参照元:PointCab日本公式サイト
https://livingcg.jp/pointcab/product/